歯周病とは、お口の中の歯周病菌によって歯を支える歯茎や歯槽骨が破壊されていく病気のことを指します。
歯と歯茎の境目（歯肉溝）など、お口の中の清掃が不十分になりがちなにところに歯周病菌は蓄積し、歯肉の辺縁に炎症を引き起こします。
歯周病は初期段階で痛みをほとんど感じませんが、それが災いとなって放置していると、気付かないうちに歯肉溝（歯周ポケット）はどんどんと深くなり、歯を支える土台（歯槽骨）が溶けて次第に歯がグラついてきます。さらに症状がひどくなれば、抜歯が必要となるケースもあります。
歯周病はどのように進行する？進行段階別にあらわれる症状
一般的に、歯周病は以下のような過程をたどって進行します。
1.健康な状態
歯と歯茎のすき間（ポケット）もなく、歯茎が引き締まっている。
2.軽度歯周病
歯茎が赤く腫れあがり、歯を磨いたり固いものを食べると出血することもある。
3.中度歯周病
ポケットの炎症が慢性化して、骨が溶けはじめる。口臭もあり、歯が浮いたような感じがする。
4.重度歯周病
歯根を支えている骨がほとんど溶けてしまう。歯根が露出し歯のグラつきがひどくなる。
歯周病がもたらす影響とは？歯周病と全身疾患との関係性
歯周病は別名を「サイレント・キラー（沈黙の病気）」と呼び、自覚症状のあらわれにくい特徴のある病気です。症状の進行に気づかないまま放っておくと、歯周病は重度化するだけでなく、糖尿病や心臓病、脳の血管障害など、さまざまな全身疾患の引き金にもなるのです。
たとえば、歯周病は以下のような全身疾患と深い関連性があります。
糖尿病を悪化させる
これまで、歯周病は糖尿病の合併症の一つと考えられてきました。しかし、近年では「歯周病が糖尿病を悪化させている」という逆の関係性も明らかになっています。つまり、歯周病と糖尿病は相互に悪影響を与え合っているのです。
ただし、これは同時に、歯周病を治療することによって糖尿病を改善することができるということも意味しています。そのため、糖尿病を患っている方は歯周病の早期治療が望まれます。
低体重児早産の危険性が上がる
妊娠すると、体内でエストロゲンと呼ばれる女性ホルモンが豊富に生成されます（妊娠終期には月経時の10～30倍）。エストロゲンは妊娠期に重要な役割を果たすホルモンですが、同時に歯周病菌を増殖させ、歯肉を形作る細胞を侵食する働きも持っています。この作用により、妊娠すると歯肉炎にかかりやすくなります。
近年の研究では「妊娠中の女性が歯周病に罹患している場合、通常時と比べて低体重児および早産のリスクが7倍高くなる」という統計結果が発表されています。妊娠中は特に細心の注意を払い、お口の予防管理に努めることが重要です。
心臓・脳血管疾患のリスクを高める
心筋梗塞や脳梗塞は、何らかの原因で血管が狭くなったり、塞がれてしまうことで血液供給が無くなる（または血管が破裂する）ことで引き起こされる危険な病気です。近年の研究では、これらの病気の原因の1つに歯周病菌が関わっていることが明らかになっています。
歯周病菌は体内で動脈硬化物質の生成を促し、血管内にプラーク(脂肪性沈着物)を生みだします。血管内に蓄積されたプラークは血液の通り道を狭め、心筋梗塞や脳梗塞などの症状を引き起こすと考えられているのです。
動脈疾患を予防していくためにも、歯周病の早期解決が望まれます。
誤嚥性肺炎を引き起こす
誤嚥性肺炎（ごえんせいはいえん）とは、食べ物などの異物が誤って肺に入り込んでしまうことで発症する肺炎です。
通常、肺にはこうした異物が入らないよう、咳をすることで器官を守る機能があります。しかし、加齢に伴ってこうした機能は衰え、食べ物などと一緒に歯周病菌が肺の中へ入ってしまう場合があります。
歯周病治療は、誤嚥性肺炎の予防を行っていくうえで行うべき重要な治療といえます。
当院で扱う歯周病治療について
プラークコントロール
プラークコントロールとは、虫歯や歯周病を促進する口内の有害プラークを除去することによって、お口の中に無害な細菌グループが支配的になる環境を整える、歯周病のもっとも基本的な治療法です。
プラークコントロールではまず、歯垢・歯石を取り除くためのお口のクリーニング（PMTC）を行います。その後、初期の治療で取り切れなかった歯周ポケット内の歯石を取り除いていきます。
スケーリング・ルートプレーニング
プラークコントロールによってお口の中の状況が徐々に改善してくると、歯周ポケット近辺に付着した汚れや歯石を取り除くためのスケーリング・ルートプレーニングを行います。
これら一連の処置を行ったあとは、正しいブラッシング方法についても指導いたします。
歯周ポケットの深層部に歯石が付着している場合は、歯茎の切開などによって歯石を取り除く必要があります。
手術で歯周病を治す
歯周ポケットの深部に歯石が付着している場合、歯肉の切開を伴う歯周病治療が必要となるケースがあります。
歯茎にメスを入れる目的としては、主に次の３つが挙げられます。
- 1.深い歯周ポケット内部の清掃
- 2.破壊された骨や歯肉のかたちの改善
- 3.再発予防のための歯肉の改善
- 4.再生治療へ
定期的な歯科検診を受け、歯周病予防を心がけましょう
歯周病はお口の中だけの病気ではなく、糖尿病や心臓病といった様々な全身疾患の原因にもなり得ることをこちらでご説明しました。また、歯周病は自覚症状も少ない病気なので、患者様にご来院いただいた時点ですでに症状がかなり進行してしまっていることも多くあります。
手遅れにならないためにも、普段からお口の予防管理をしっかりと行っていくことが重要です。また、歯周病は歯科医院での定期的な歯科検診によって早期発見・予防を行うことが可能です。
すでに治療の必要性がある場合は、早めに歯科治療を受けることをオススメします。