マタニティー歯科とは、妊婦さんの多くが抱えるお口の問題を解決し、妊婦さんとお腹の中の赤ちゃんの健康を守っていくための診療メニューです。
妊娠期の女性はホルモンの働きの変化により、お口の中の健康状態や、体調・気持ちなどが不安定になりがちです。また、万が一妊婦さんの健康状態が悪化した場合は、お腹の中の赤ちゃんに悪影響を与える可能性も十分に考えられるため、細心の注意を払って健康管理を行っていく必要があります。
妊婦さんの抱えるお口の変化と問題とは？
一般的に、妊娠期の女性の多くは下記のような変化や問題を経験しやすくなります。
- 1.体内でエストロゲンと呼ばれる女性ホルモンが豊富に生成されます。エストロゲンは妊娠期になくてはならないホルモンですが、同時にお口の中で歯周病菌を増殖させ、歯周組織を侵食する働きも持っています。こうしたホルモンの作用によって歯周病になると、低体重児および早産のリスクがおよそ7倍まで高まることが分かっています。
- 2.つわりによって歯磨きをしっかり行うことが困難になったり、逆流性食道炎により虫歯のリスクが高まるこ事があります。ブラッシングが不十分になると、虫歯や妊娠性エプーリス（歯茎から出血する症状）を引き起こしますし、嘔吐によってお口の中が酸性に傾き歯を脆くしてしまいます。
- 3.気持ちや体調の変化により、歯科治療を受けたくても受けられないといった患者様も多くいらっしゃいます。
マタニティ―歯科では、上記のような変化や問題を解決し、妊娠中の患者様とお腹の中の赤ちゃんの健康を守っていくための歯科診療を行います。
妊婦さんが歯科治療を受けることで得られる３つのメリット
1.生まれてくる赤ちゃんの歯の健康を守る
生まれたばかりの赤ちゃんのお口には、虫歯菌は存在しません。虫歯は、赤ちゃんと長い時間を一緒に過ごすことになるお母様や周囲の方の唾液などを介して徐々に感染していくのです。
感染予防がもっとも重要になるのは、赤ちゃんが生まれてから全ての乳歯が生え揃うまで（2歳7か月ごろ）の時期です。つまり、お子様が生まれるまえにお母様の口腔状態をきちんと良好に整えておくことが大切なのです。
2.安全な出産につながる
先ほども紹介したとおり、妊娠期にはエストロゲン（女性ホルモン）の働きにより歯周病になりやすくなります。
歯周病になると陣痛を引き起こすプロスタグランジンが豊富に生成され、早産や低体重児出産の可能性を増加させます。歯周病の予防・治療は安全な出産に必要不可欠といえます。
3.お口の状態の改善・維持
妊娠初期には、つわりや体調が優れないことが多くなり、十分な歯磨きが困難になる場合があります。妊娠中は虫歯や歯肉の腫れ・出血などのトラブルも増加します。
また、痛みを我慢すること自体もお腹の中の赤ちゃんに悪影響を与えるケースもあります。ご自身ではなかなかケアしにくいお口の中を、この時期にしっかりと検診しておき、問題があればきちんと治療しておくことが重要です。
妊娠中の歯科治療はいつまでに受けるべき？
妊娠中の歯科治療は、妊娠中期（5～8ヶ月）であれば問題なく受けていただくことができます。妊娠初期と妊娠後期の治療は、応急処置にとどめます。
適切な歯科処置をご提供するためにも、妊娠中の方や妊娠の可能性のある方は、治療前に必ず当院のスタッフへ申告くださいますようにご協力をお願いします。また、母子手帳などがあれば、当院が患者様の健康状態を把握し、スムーズに診療することができます。お持ちの方は、ぜひご持参ください。
妊娠中にお口の中をケアする方法
妊婦さんは身体や心の変化からお口の中が健康状態が不安定になりやすくなります。そこで、妊娠期に経験しやすいトラブルと対処法についてご紹介いたします。
妊娠中の女性が経験しやすいトラブルは、主に下記の2つです。
1.歯ブラシが気持ち悪くて歯磨きが困難。口の中がネバネバする。
こうした場合、まずは歯ブラシのヘッド（先端部分）を小さいものへと変えてみることをオススメします。それでも磨きにくい場合は、マウスウォッシュなどを使って口の中をゆすぐだけでもお口の健康維持に役立ちます。
2.少しずつ何度も食事を取るため、虫歯にならないか心配
食後にキシリトールを含んだガムを噛むと、唾液の分泌が促されて虫歯のリスクを減少させることができます。また、キシリトールの成分は胎児の健康な歯の生成に役立つとも言われています。