虫歯や歯周病が重度化して抜歯を余儀なくされた場合、その後は入れ歯やブリッジ、インプラント治療などの選択肢があります。
入れ歯やブリッジは保険適用のものもありますが、インプラントは高額医療です。また、多くの方はできるだけ自分の歯を残したいと思っているでしょう。
自分の天然の歯を使い、かつ機能を回復する方法に『自家歯牙移植』があります。
自家歯牙移植では、歯の抜けた場所に自身の余っている歯(親知らずなど)を移植し、天然歯の再利用を図ります。
抜いた親知らずを移植して再利用する『自家歯牙移植』
抜歯処置を行った自分の歯(ドナー歯)は、歯を失った部分へと移植することで再利用できる可能性があります。この処置のことを自家歯牙移植(じかしがいしょく)といいます。
ドナー歯の移植が上手くいけば、周囲の歯と同じ働きを持つようになるため、今までのご自分の歯と同じように使っていくことができます。
自家歯牙移植のメリット・デメリット
メリット
- 自分の歯として機能する。
- ブリッジや義歯のように隣の歯に負担をかけない。
デメリット
- 適応症が制限される。
- 親知らず歯の抜歯のため腫れが出ることもある。
- 必ず成功するとは限らない。
- 成功したとしても何年機能できるか予後が不明である。
一般的な治療法(インプラントや入れ歯)との違い
歯を失った時の一般的な治療法には、インプラントや入れ歯などがあります。いずれも自分の歯ではない『人工歯』を使用する治療法ですが、自家歯牙移植の場合は「自分の歯」を使います。自分の歯には、歯の根の周囲にクッションの役割を果たす「歯根膜」があるため、自家歯牙移植を行った歯は、普通の歯と同じ噛み心地で物を食べることができます。
人工のインプラントや入れ歯ではこの歯根膜の役割を再現することができないため、自家歯牙移植が可能な状況にある場合は、まずこの方法を検討すると良いでしょう。
個人差はありますが、移植後はおよそ3ヵ月で移植歯の周りに骨が生成されはじめ、その後は徐々に根付くようになります。
自家歯牙移植が可能となる条件とは?
自家歯牙移植を行うためには、次のような条件を満たす必要があります。
- ドナー歯を保存していること
- ドナー歯と、移植する部分の大きさが合っていること
- ドナー歯が健康な状態であること
- 患者様の年齢が40代以前であれば成功率が高まる
事故などによって前歯が抜けた・折れた患者様へ
自転車の転倒事故やスポーツの最中、また遊具からの落下などで前歯が折れてしまった(あるいは抜けてしまった)場合は、早急に当院までご来院ください。条件がよければ、歯を骨につけることで抜けた歯が元に戻ったり、根元から折れてしまっている場合も抜かずに済む場合があります。
早期に治療を行うほど、元通りにできる可能性が高くなります。また、以下の点を守っていただくことで治療の成功率を高めることができます。
- 折れた歯を歯の保存液、もしくは自分のお口の中に入れて持ってくる
- 保存液が無い場合は、元の歯の場所に差し込んでおくのも1つの手段
- 折れた歯の根元は、絶対に手で持ったり、水で洗わない
※再生するための組織が死んでしまうため